コドモ以上、オトナ未満。


「ココちゃんの手、ひんやりして気持ちーな。夏なのに」

「……大森、手汗かいてる」

「うわー、それ言っちゃう? ココちゃんやっぱ手強いわ~」


おおげさにショックを受けたそぶりを見せる大森を笑いながらも、あたしの思い出していたのは、真咲と手をつないでるときのこと。


もともと熱を持ってる大森とは違って、真咲の手は最初、あたしと同じ程度のぬくもりしかない。

けれど、つないでるうちに少しずつあたたまってくるんだ。

お互いに同じ分だけ。

だから、すごく心地よくて。



「――あ、あそこのビルの二階」



大森の声で、あたしは我に返る。

そして真咲を頭の中から追い出すと、大森に手を引かれて、目的地のビルへ向かった。





――大森は、歌が上手かった。

あたしに気を遣ってなのか、わりと知名度のある曲ばかり入れてくれたから、退屈でもなかったし。

最初は無表情で聴いていたあたしも、そのうち小さな拍手をするようになっていた。


「……っあー。ちょっと休憩。声かれてきた」


ぼふ、と背中をソファに預けてそう言った大森。

テーブルの上のグラスに手を伸ばし、コーラを一気にストローで飲んでいる。


「そりゃ、あんだけ歌えばね。しかも一人で連続」

「あ、ココちゃんも歌う気になってくれた?」

「全然」


「だよねー」と苦笑して、ポケットからスマホを取り出した大森。

そのまま黙って画面を眺めていた彼だったけど、しばらくすると部屋に流れるBGMに紛れてしまいそうな、かすかな声で呟いた。



「……心矢のヤツ、すげー必死だな」


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