コドモ以上、オトナ未満。
「ココちゃんの手、ひんやりして気持ちーな。夏なのに」
「……大森、手汗かいてる」
「うわー、それ言っちゃう? ココちゃんやっぱ手強いわ~」
おおげさにショックを受けたそぶりを見せる大森を笑いながらも、あたしの思い出していたのは、真咲と手をつないでるときのこと。
もともと熱を持ってる大森とは違って、真咲の手は最初、あたしと同じ程度のぬくもりしかない。
けれど、つないでるうちに少しずつあたたまってくるんだ。
お互いに同じ分だけ。
だから、すごく心地よくて。
「――あ、あそこのビルの二階」
大森の声で、あたしは我に返る。
そして真咲を頭の中から追い出すと、大森に手を引かれて、目的地のビルへ向かった。
*
――大森は、歌が上手かった。
あたしに気を遣ってなのか、わりと知名度のある曲ばかり入れてくれたから、退屈でもなかったし。
最初は無表情で聴いていたあたしも、そのうち小さな拍手をするようになっていた。
「……っあー。ちょっと休憩。声かれてきた」
ぼふ、と背中をソファに預けてそう言った大森。
テーブルの上のグラスに手を伸ばし、コーラを一気にストローで飲んでいる。
「そりゃ、あんだけ歌えばね。しかも一人で連続」
「あ、ココちゃんも歌う気になってくれた?」
「全然」
「だよねー」と苦笑して、ポケットからスマホを取り出した大森。
そのまま黙って画面を眺めていた彼だったけど、しばらくすると部屋に流れるBGMに紛れてしまいそうな、かすかな声で呟いた。
「……心矢のヤツ、すげー必死だな」