聖ヨハン学校の日常

2話




「おい…須藤また保健室か」

猜疑の目を向けた教師と鉢合わせた私は、心の中で舌打ちをした。よりによって、とも呟いたかもしれない。
目の前に居るのは体育教師。オス。名前は……えっと、煉山<ネリヤマ>だったかな。
いつも体育はこの煉山の双子の姉の、麗奈<レイナ>先生の授業だから、煉山とはあまり話した事が無い。

でも、私が普段仮病を装って授業を抜け出しているのは知っているんだろう。
この廊下をもう少し歩くと私のオアシス(保健室)が待っているというのに。
身体のだるさを理由に休もうとしてる私は煉山を相手にしていたら仮病だという事がばれる可能性が高くなるだろう。

「身体がだるくて」

声色をなるべく低く。いつもの癖がでないように。
煉山の隣を通り過ぎた。背中を向けていても静かな廊下では煉山がついたため息は聞こえた。

この学校には保健室が三つある。小学生用と、中学生用と、高校生用。別にどの保健室を誰が使っても問題は無いんだけれど。
その中でも一番大きいのが今私が向かっている中等校舎にある保健室。中等校舎は学校の正門に一番近いからだとか聞いたことある。…気がする。
そのせいか、常に室温は快適、ベッドはふかふかで気持ちいい。

まぁ、保健室を管理する保険医のおかげの方が多いかも知れないけれど。

保健室がオアシスなのは変わりないが、保険医が少々めんどくさい。
無駄に優しくて真面目でお節介でうるさいし、保険医のくせに血が苦手。
顔はいい方なんだろうけど、鷲鼻なのが気に食わない。あ、男なのに長髪なのも気に食わないんだった。

なにしろ、あの保険医はめんどくさい。


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