アイドルなんて、なりたくない<font color=

だが、今は人気絶頂の芸能人である。

複雑な気分だ。



精神統一を続けていると、胸の奥がざわめいてきた。

（…前にも同じような事が）

無表情だった優衣の表情が陰る。

思い出すだけで、背筋は凍り付き、嫌悪感が滲み出てくる。

優衣自身にとっては、人生の汚点に近いものだった。
だからこそ、鍛練にも力が入り、優衣を強くした訳だが。

（お、思い出したくないわ。あんな屈辱の日々）

膝に置いてある拳をグッと握り締める。

その時

「かあぁぁぁぁっっ<font color="#FF0000"><font color="#FF0000"></font></font>」

入り口の方から、凄まじい気と怒号が飛んでくる。

あまりの気の勢いに、優衣はバランスを失い、手を着いてしまう。

「馬鹿者！これくらいの気で乱れるな！」

それは、祖父・木下辰之助の口から出てきた。

優衣は態勢を立て直し

「申し訳ありません。師範」

手をついて深々と謝る。

辰之助の足が動く。

一歩一歩が、すべてに威厳が付いてきている。

辰之助は、優衣の前に座り

「何かあったか？」

師範としての厳しさと、祖父としての優しさを兼ね合わせて、優衣に問い掛ける。

優衣は、首を横に振り