アイドルなんて、なりたくない<font color=
さらに、優衣の心をかき乱したのは、洸太だった。

彼は優衣が《こももちゃん》の撮影が行なわれていた時期に龍神町に越して来た。

先祖代々、商売しているお店を両親が継ぐ為だった。

当初、彼は引っ越しに乗り気じゃなかった。

都会にいる方が、大ファンの《秋山レイナ》に会える機会があるからだ。

しかし、龍神町にレイナそっくりの少女がいると聞いて、こっそり覗きに行くと、彼女は修業の旅に出ていた。

肩を落とした彼の目に《秋山レイナ》が演じる《実写版魔法少女こももちゃん》の映画の宣伝PVが入る。

華麗な動きと、愛らしい笑顔に、洸太の胸は高鳴り、画面に釘づけになってしまった。

そして、つられるように木下道場に入門した。

入門してから、洸太はレイナそっくりの少女に会うのを楽しみにしていた。

…だが、修業の旅から戻ったという優衣に夢は砕かれた。

姿形は似ているが、中身は別。

レイナは愛敬がよいが優衣は愛想が悪い。

空手は、恐ろしい位に強すぎる。

モノの言い方も、可愛くない。

大の男を軽々と倒してしまう。

男嫌い

頭もいい

人望も厚すぎる。

すぐ殴る。

どこを取ってもレイナには似ていない。
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