薔薇の香りと共に

目の前の薔薇ではなく、どこか遠くを見ているような母に、私は問い掛けた。


「お母さん…話って?」


私の問いに、母はゆっくりと私を振り返った。


「………お母さんね、月に伝えなきゃならないことがあるの」


私に…?何を??


「月、あんた、お父さんに会ってみたい?」


「え…?」


な…何言ってるの…?


お父さん…??


「お父さんのこと、知りたい?」


「……そ、そりゃあ、知りたいけど…でも…」


「動揺するのも無理ないわ。あんたにお父さんのこと話したこと、なかったものね」


「うん…」


「いい…?今から話すこと、よく聞いてね。そして、このことは誰にも言っては駄目。わかった?」


この時は、これから告げられることがあんなにも信じがたい事だとは思いもしなかった。
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