Sweet Honey Baby
 投げた袋がシュッと音を立てて大暴投。


 でも、丸っきりデカいだけの木偶の坊ではなかったらしく、軽くジャンプした一也がバシッと音を立てて掴みとった。


 ナイス、キャッチ…なんて。




 「…なんだ、これ」

 「服とか、コートとかのお礼」




 それにしちゃ、かなり見劣りするけど、まあ気持ちよ、気持ち。


 あたしの言葉に目を瞬かせて、一也がもう一度手の中の袋へと視線を落とす。


 なんだかその仕草が妙に気恥ずかしくて、あたしは今度こそ踵を返した。


 ベシッ。


 何かが頭に当たった。


 無意識に頭に手を当てながら、振り向いたあたしの顔はけっこう引き攣ってたかも。




 「ちょっと!?」




 ピクピクしながら、いまさっきあたしの頭に当たって落ちた物へと視線を落とす。


 けっこう痛かったんですけど。




 「……なにこれ」




 屈み込んで拾い上げれば、手のひらサイズの紙箱だった。




 「やるよ」

 「は?」




 やるよって、あれだけさんざんぱら買ってくれちゃって、まだなんかくれるってわけ?


 それにしても何も投げつけることはないんじゃないの?


 …って、あたしもか。




 「これの礼」




 ヒラヒラと後ろ手に持ったあたしがあげた紙袋を振って、立ち去ってゆく一也の後姿を見送って。




 「…お礼の礼って、どう見てもあたしがあげる前に買ってるんだから、意味違うでしょ、それ」




 まったく、何考えてんだか。


 でも、拾う時ちょっとだけ、手を伸ばすのに躊躇してしまった。




 「……まさか、指輪とかそんなんじゃないわよね」




 自意識過剰?


 そうなんだったら、どんなにいいだろう。


 しゃがみ込んで拾い上げた紙箱を目の上に翳して、思わず透かし見る。


 最期に見た、浩介のショックを受けた顔と、彼の姉であたしの親友だった美咲の憎しみに歪んだ顔が脳裏に思い浮かんだ。




 『人殺し!絶対、許さないからッ』









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