躊躇いと戸惑いの中で
恋愛指数



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翌朝。
律儀というか、抜かりないというか。
乾君は、早くにベッドを抜け出し、一旦家に戻るという。
同じシャツやネクタイでは、まずいということなのかもしれない。

彼を送るためにベッドから起き上がろうとする私を制止して、彼がおでこにキスをくれた。

「まだ時間があるので、もう少しゆっくりしていてください」

小さい子を見守る親のような顔を向けると、布団をかけなおしてくれる。

ベッドの中から出たら、もう、です。ます。が戻っていることに、一人頬が緩む。

それにしても、店舗に居る時から思っていたけれど、乾君て言動が大人びてるんだよね。
いつも冷静だし。
まぁ、ここのところはよく笑うようになったけれど、あまり感情を表に出さないタイプなのかもしれない。

「お休みなさい」

もう一度私に眠るよう促し、乾君が頭を優しく撫でてくれる。

なんて、心地いいんだろう。
触れられたところから、愛しさが流れ込んでくるみたいだ。
その手が離れていく事が、とても寂しく感じてしまうほど。

もっと一緒にいたい。

そんな素直な気持ちを抱いたけれど、年上だという小さなプライドが邪魔をする。

「おやすみ」

呟き、ベッドの中から彼を見送ることにした。

スーツに着替える衣擦れの音。
寝室のドアを開ける音。
鞄を持ち玄関へと向かう音。
静かに閉まる玄関ドアの音。

彼の立てる音の一つ一つを聞きながら、私は目を閉じ幸せを噛みしめる。

モーニングコーヒー、淹れてあげたかったな。

今日は淹れてあげられなかったけれど、また直ぐにでもその機会は訪れるだろう、と自宅のテーブルで淹れたてのコーヒーを彼と飲んでいるところを想像して、つい顔がにやけてしまう。

朝食は、パンだろうか?
それとも白いご飯にお味噌汁?

夜を共にしただけで、そんなことまで先走って考えている自分がおかしい。
幸せな感情を胸に、彼の温もりが残る布団に包まりながら私は浅い眠りを迎えた。


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