躊躇いと戸惑いの中で
結婚指数




   結婚指数




朝からコーヒーを二度もお代わりし、はやくランチへいけるようにと仕事のスピードを上げていた。

はやる気持ちでカタカタとキーボードを叩いているところへ、人影が近づいてきたことに気がつき顔を上げると経理の田山さんだった。

「忙しそうですね」
「えぇ、まぁ」

なんだろうと思っていたら、ニヤニヤされた。
これは、よくない表情だ。
きっと、よからぬことを考えている気がする。
まさか、朝給湯室で乾君と一緒だったところを見られていたんじゃ……。

警戒しながら田山さんの次の言葉を待っていた。
すると。

「今日は、どちらとお出かけですか?」

ニヤニヤと頬を緩めながらの言葉がこれだ。
給湯室での事は、どうやら見られていなかったみたいだけれど、案の定ってやつだ。

経理って、今暇なの?

他人を詮索している余裕があるなんて、羨ましいよ。
まったく。

そうだ。

「あ、社長が収支報告見たいって言ってましたよ」

田山さんの質問には応えずに、少し前にそんなことを社長がいってたな、なんてのを思い出して伝えてみた。
すると、一瞬で田山さんの表情が変わる。

「社長は、今日何時くらいにこちらに来られるんでしょう?」

慌てたように社長の予定を訊ねるから、多分お昼くらいだ、と適当に応えておいた。
秘書でもないのに、社長の予定を私が知っているはずもない。

急いで席に戻り仕事をやりだした田山さんの姿を見て、ちょっと意地悪すぎただろうかと苦笑い。

けれど、あれこれ詮索されるのは、面倒だ。
社内のゴシップネタ、というより、社員の暇つぶしにされるなんて想像もしたくない。


< 118 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop