躊躇いと戸惑いの中で
自分と向き合う





     自分と向き合う






週末。
のんびりとした朝を迎え、私はお気に入りのカップで一人コーヒーを飲んでいた。

休日だからといって、距離を置きたいと言った聡太と逢えるはずもなく。
一人の時間を寂しく過ごす日が続き、今日も週末を持て余す。

店舗にでも顔を出そうかな。

そんな考えに苦笑いが漏れる。

どれだけ仕事好きなのよ。
他にすることないの?

自分自身に言って、とりあえずおしゃれして出かける準備をすることにした。
着替えて化粧をしながら、鏡に映る自分に話しかけてみる。

「久しぶりに、カップでも買いに行こうかな。それとも、映画か洋服でも買いに行く?」

映画館で映画なんて、もう随分と観ていない。
家で見るDVDじゃなく、たまにはポップコーン片手に映画鑑賞も悪くかないかな。

聡太に逢うわけでもないのに、おしゃれをしてお気に入りのヒールを履いた。
それでも、カツカツと地面を蹴って歩けば、なんとなく気分も上がってくるというもの。

賑わう街に出て洋服やバッグを見て歩く。
慣れない雑踏にちょっと疲れて、少しの溜息。

聡太と一緒なら、雑踏だって疲れたりしなかったんだろうな。

観たい映画が始まる時間までまだ余裕もあるし、コーヒーショップに足を向け、表を眺めながらコーヒーを飲んでいるとメッセージが届いた。

【 今何処? 】

短い問いかけに、街の名前を返す。

【 コーヒーでも飲んでるのか? 】

「正解」

言葉にしながらメッセージを送信。

【 俺もだ 】
「奇遇だね」

独り言のように呟きながらその言葉を打っていると、隣にストンと腰を下ろす人物に驚いた。


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