呪いの着メロ
『グループ研究発表』

 高校の入学祝いとか何とか、クラスの親睦を深めるとか大層なお題目を掲げてHRの時間に担任が俺達に課した課題だ。

 四、五人のグループ一組で何かを研究して発表する。テーマは自由だ。

 だから、困る。

 夏休みの自由研究のようだ。何か決まっていた方がやりやすい。

 自由なんてするからさっきの三嶋のような、オカルトなんて案が安易に出て、保留になる。

 あんなもの、どうやって研究すればいいんだよ。

「他になんかないか?」

 班長らしく、俺が話し合いの議長を務める。誕生日が班内で一番早いというだけで、無理矢理押し付けられてしまった役職だ。

 理不尽を感じずにはいられないが、ごねて時間を喰うのも面倒だったので、仕方なく承諾した。

「ん~僕は思い付かないな………霧谷さんはどう?」

 康介が班内会議開始からずっと窓の外を見ている最後のメンバーに呼び掛けた。

 康介は俺の中学の時からの親友で、フレンドリーな性格のためか、ああいう少し変わった奴でも自然と声をかける。

 そう、俺が言うのもなんだが、この霧谷 志帆(きりたに しほ)は少し変わってる。

左目を眼帯で覆っている。怪我をしているのか、病気なのか、本人の口からその理由は語られたことはないし、俺も詮索する気はない。

 変わった点はそこではなくて、誰とも交わろうとしない点だ。

 普通、女子は何人かのグループに纏まるはずだが、霧谷はいつも自分の席に座って、窓の外の景色を眺めているか、何か難しそうな本を読んでいるかだ。

 男子の中では、そんな所が神秘的で萌える……なんて奴もいるらしい。

 俺には理解できんがな。

 とにかく霧谷は、単にネクラというよりは、進んで孤独を求めているかのような代わった女子だ。
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