恋日和〜春〜





「あぁ。もう会った?よく図書館音和のことは莉音に言ってあるから。」
「まだお会いしてないの。」
実のところ、彼女は姉さんと会ったことがある。そこも失くした記憶の一部分だろうけど…
「莉音も会いたがってたから…。ちゃんと挨拶しろよ?」
「うん。お仕事の邪魔してごめんね、、」
すると突然、図書館のドアが開いた。中に入ってきたのは時希。
「お、時希、久しぶりだな。」
「悠都さん、お久しぶりです。」

しばらくして「花村さん」と声をかけると花村兄妹がこちらを向いた。
「悠都さんも音和も“花村さん”って呼んでる?」
と時希が言う。俺はいたって素直に答える。
「あぁ…そうだな」
「音和って呼べばいいじゃん」
「おとか…」
昔は何て呼んでいただろう……以前、花村さんのことは“悠兄”と呼んでいた。しばらく時が経って“花村さん”になった。頭の中を10数年前に戻すと、頭に浮かんだのは“音”の文字。




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