届かなくても、
ジ・エンド
家に帰っていつもの行動パターンを行う。




布団に入ると毎日すぐ寝てしまうのに




今日は目が冴えたままであった。





梶山くんの言われたことが胸に刺さる。





指に刺さった棘みたいにちくちくと。



『先輩。





好きになる責任もないのに




人の事好きになっちゃ駄目ですよ。絶対。』





好きになる責任って何だろう。




梶山くんは答え、知ってるのかな。





でも、聞いても多分しらばっくれるだろうな。





教えてくれない。




梶山くんはその責任を持ってるのかな。




肝心なことは誰も教えてくれない。





自分で答えを見つけるしかない。







軽はずみな気持ちで付き合うなってこと?




簡単に人を好きになってたら嫉妬する、とか?






違う。なんか、違う。




答えは全然違うところにある気がする。




私が向かっている方にあるのは相手の気持ち。





自分の気持ち目線じゃない。



でも自分の気持ちって、何だろう。







そこに来て、初めて気づく。





私は思っている以上に空虚な存在だと。





繕ってある殻に




すっぽりと収まっている蛹みたいに。




どんな成虫になるんだろう。





強いカブト虫になるのか




美しい蝶になるのか




異彩を放つ蛾になるのか





私は私自身を理解してない。





梶山くんは知ってるんだ。






この悩みの根本にあるものを。





だって、梶山くんは




あんなに寂しそうに去って行ったんだもの。
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