♠俺様王子と貧乏メイド♧



「えへへっ大量大量♪」


両手に全部で400円だったニンジンと
もやしと大根などを抱えて
今日の勝利に自分で自分を褒める。

勝った後の帰りの足取りは
軽くていいなー♪



「なんて。」




でも、実際の足は数え切れないほど
おば様たちに踏まれて、毎朝結んでくる
髪はゴムがどこかで飛んでしまって
くしゃくしゃ。


これが私の高校生活?



こんなの憧れてた高校生活とは
ちがうじゃない!

本当は帰りに映画やカフェに寄ったり
メイクやおしゃれをしたかった。




なのになんで

私は自分の思いに涙を流して
いつもの自作の歌を大声で歌った。


「♪こんな女に誰がした
  こんな娘に誰がした
  お金がないけど幸せ?
  そんなの全部うそだー
  神様のばかやろう
  空から金が降ってこーい」


涙で滲んだ星空を見上げ
歌いながら歩いていると

ドンっ


何かにぶつかった。


私はしりもちをついて
おしりをさする。


「いった~もうなんなの…よ…」



え。

私の前に誰かが立ってる。

でも涙のせいで良く見えない。

私は目をごしごし擦って、
誰かを確認しなおした。


白いブレザーに青のラインが入った制服。
私を見下ろす冷たい瞳。

ん?白いブレザーに青のライン?



え、、、

も、もしかして…






西園寺学園の生徒!?

私、なんて人にぶつかってしまったの!?

これでクリーニング代とかを
要求されたら私の家はもう…


大変な事に気づいた私は
そのまま土下座をして必死に
許して貰えるように謝った。




「ごめんなさい!私のような人間が 
 ぶつかってしまいまして!
 見ての通り、貧乏な者です。
 どうか許してください!!」


私は地面を見ながら、ひたすら謝る。









「あーあ。碧の制服、
 汚れちゃったんじゃなーい?」






私が謝った後の第一声は抜けた男の声。

チラッと上を見ると、ぶつかった男と
同じ制服を着た茶髪の男がニヤニヤ
しながら私に言い捨てた。


「ごめんなさい。」

謝る事しか出来ない私は
その男にも謝り続ける。

しかしぶつかった男、本人は何も言わず
ただ私を見つめてきた。

そして私の前でしゃがみ

「んっ…」

私の顎をくいっと人差し指であげて
男は茶髪の男のようにニヤリと笑った。






「お前、俺のメイドになれよ」






「…はい?!」





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