義兄(あに)と悪魔と私
 
比呂くんを避けるように、一本早いバスに乗る。
我ながらばかばかしいと思う。
こんなことをしても何の意味もない。

でも、他にどうしたらいいのか分からなかった。
他にどうすれば、この胸の乱れをおさめることができるのか。

いつもより早い時間帯、校門に生徒はまばらで、私は駐輪場から出てきた麻実を見つけた。

「あ……麻実!」

思い切って声をかけた。
諦めたなんて嘘だ。本当はずっとこうしたかった。

だって麻実は、大切な私の……

「……円?」

麻実も私に気づいて立ち止まった。
私達がまともに顔を合わせるのは、私の嘘が麻実を傷つけた、あの日以来のことだった。
 
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