義兄(あに)と悪魔と私
 
本当は、応援などできるはずがなかった。

外面はともかく、比呂くんの本性は悪魔だ。たとえたまに優しくったって、彼のしたことを忘れてはいけない。

麻実は大切な友達。彼女には傷ついてほしくない。

私はケータイの電源を落とし、目を閉じた。

明日は木曜日。旅行中は比呂くんの家庭教師は休みなので、私は比呂くんの部屋に行かなくてもいい。

久しぶりに、私が私の身体を自由にできる木曜日。つかの間の安息。

それなのに、安堵も喜びもない。
ただ胸の中にはモヤモヤと、言い様のない不快感が渦巻いている。

(私……おかしい)

その謎の不快感を打ち消そうと、私はベッドの中へと深く潜り込んだ。
 
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