義兄(あに)と悪魔と私
 
ある日の昼休み、教室では女子達が昨晩のドラマの話題で盛り上がっていた。

私と麻実はその輪から少し離れてお昼を食べていたが、その大きくて無駄に高い笑い声は嫌でも耳に届いていた。

「円は見てる? 砂の恋人」

私は驚いて、お弁当の玉子焼きを箸から落としそうになる。
麻実がそういう話題を振るのは珍しい。
そんな私の様子を見て、麻実は苦笑した。

「そんなにびっくりしなくても。あたし結構好きだよ? ドラマとか映画とか」

ようやく気が付いた。麻実はいつも、私に合わせてくれていたのだ。

「……そうなんだ。どんな話なの?」

麻実の気遣いを知って、申し訳ない気持ちになる。

「えーっとねぇ、簡単に言うと……普通のOLがある日上司に無理矢理関係を迫られるところから始まって、最初は嫌悪するんだけどそのうちその上司に惹かれ始めちゃうの。だけどその上司には妻も子供もいて……っていう」
 
< 92 / 228 >

この作品をシェア

pagetop