君影草~夜香花閑話~
「三人か……。あいつらは、ここの家臣ではないだろう。殺しても、問題ないはずだ」

 真砂がそう言ったとき、浪人たちが動いた。
 足早にあきに近づきながら、腰の刀に手をかける。

 一人があきの口を後ろから塞いだ。
 その瞬間。

 真砂はその男の背後に降り立った。
 男の後ろに、背中合わせの状態で。
 後続の浪人二人は、しばらく何が起こったのかわからないように動きを止めた。

 真砂は向かって右側の男の腰から、脇差を奪った。
 鞘から引き抜き様、持ち主の胸を逆袈裟に斬る。
 そのまま反転し、振り上げていた脇差で、今度はあきを捕まえている男の背を、肩口から斬り下ろした。

 その間に羽月が、真砂が初めに斬った男の首を後ろから突き、捨吉が唯一無傷だった今一人の男の首に、刀を叩きつけていた。
 あきは真砂に背後から斬られた男と一緒に、道に倒れ込んだ。

「あき!」

 捨吉が、あきに駆け寄る。
 真砂はあきの横に倒れた男にとどめを刺すと、男を引き摺りつつ、道を外れた。
 羽月も同じように、己が倒した男を引き摺ってくる。

「あき、大丈夫か」

 捨吉は、ざっとあきの身体を見た。
 怪我はしていないようだ。

 小さく頷いたあきに安心し、捨吉もすぐに、残った男の死体を引き摺って、真砂の後を追った。
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