女神の落としモノ
「なんでお前が泣くんだよ」
そう言いながら、シドは私の涙を親指で拭ってくれる。
「だって………シドが泣かないからっ…」
どうして、そんなに強くいられるの?
私ならきっと、こんなに強くいられない。
「そんなんで泣かねぇよ、泣くだけの弱い俺はもういねぇ」
もういない………
じゃあきっと、泣いていた時があったって事だ。
「あの場所から逃げ出して、俺達は自由になった。俺達は、法で裁けない罪を、海賊として罪で立ち向かう道を選んだ。これが、俺達の在り方だ」
正しい答えなんて、ないんじゃないかな……
その人が信じるモノが、その人の真実。
「それがシドの信じるモノなんだね………」
私には、あるだろうか?
シドのように、人生をかけて信じる信念が。
今はまだ、見つからないけど……
シドの傍にいたら、何かがわかる気がする。
「私にも、シドの歩く道を見守らせて」
旅が終わりを迎えるまで、私も知りたい。
私の信じるモノ、揺るぎ無い想いを………
「勝手にしろ」
「ふふっ、勝手にする!」
ぶっきらぼうなシドに私は笑う。
もっと、シドの事を知りたい。もっと、この世界に生きる人を知りたい!!
それは好奇心なのか、なんなのか………
私は何故か、この世界にとても心惹かれていた。