Sugar&Milk

「変な感じですみません……」

「いえ……」

本当に変な子だ。こうも偶然会うなんて気味が悪いと思うのは仕方がない。

「あの……この間は突然誘ってびっくりしたと思うんですけど、俺は前からお店に来てくれてるお客様だって知ってて、ずっと覚えてて、だからその場の雰囲気で誘おうと思ったわけじゃないっていうか……」

中山くんははっきり分かるほどに緊張し始める。その様子に私も落ち着かない。

「あの時手伝ってくれて嬉しくて、チャンスだって思って……」

隠しきれない彼の下心は出会いの少ない私にとっては悪いものではない。

「その……しつこくて申し訳ないんですけど……もう一度ご飯に誘ってもいいですか?」

今度は私の顔が赤くなる番だった。こんな誘われ方は何年振り、いや初めてではないか。戸惑っているものの、一生懸命な態度の中山くんを見て嬉しいのも事実だった。もう少しだけこの子と話をしてみたいと思った。

「一度だけなら……」

小さい声で呟いた返事を中山くんは聞き逃さなかったようで一瞬で笑顔になる。

「ありがとうございます!」

本当に嬉しそうな顔をするから、私も照れてしまい中山くんを直視できなくなる。

「いつがいいですか!? 明日もバイトがラストまでなんで厳しいんですけど、今週末でも予定合わせますから!」

「あ、いや……」

了承したもののあまりの勢いに押される。

「今週は私が仕事が忙しくて……来週とかは?」

中山くんはカバンからスマートフォンを取り出し操作する。そうしているうちに電車がホームへと入ってくる。二人で同時に電車に乗り込むと、中山くんはスマートフォンを笑顔で眺める。

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