Third Time Lucky
「そんな経験ないから知らないわよ。ほら、さっさと戻ってこれやっといて。」

いつまでもくだらない話に付き合っていられるほど私は暇じゃない。

次は面談の報告書を作らないといけないんだから、それこそ1人にしてもらわないと困る。

「じゃあ、経験した上で答えて下さいよ。」

「んな時間無い!面談報告書作るから1人にして。」

「協力します。」

「宜しくお願い。」

これでやっと解放されて報告書に取りかかれる、そんな思いで全員の面談資料をファイルから取り出していると視界に影がかかって誘われるように顔を上げた。

今度は何だ?

「なに?葛西くん。」

いつの間にか私の横に立つ葛西くんが何を求めているか分からない。

不満か疑問か提案か、その表情からは読み取れず私は疑問符を浮かべて彼の言葉を待った。

「…葛西くん?」

口を開こうとしない葛西くんを不思議に思い、私は背筋を伸ばしてほんの少しだけ彼との距離を縮めてみる。

一体何だというのだろう。その疑問は1秒後にもっと強い感情をこめて私の中で反響する羽目になった。

「え?何?」

真顔のまま少しずつ距離をつめてくる葛西くんに自然と距離をとる。

スッと伸びてきた腕は私を通り越して後ろの壁を突き、その音でいま置かれている状況を理解したのだ。

それと同時に近すぎる距離で葛西くんが口角を上げた。

「どうです?経験してみた感想は。」

やっぱりか。
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