女子力高めなはずなのに
「帰るぞ」

お兄ちゃんはそう言うとお父さんを肩に抱えた。

予想以上に長居した上、暴行ウソ疑惑で大騒ぎしたせいか非常に機嫌が悪くなってしまった警察官にお詫びを言って交番を後にした。

「じゃあ、俺はここで」

駅前に来ると井川さんはそう言って私たちから離れた。

「井川さん、……ありがとね」

「ホント、悪かったな」

手を上げたお兄ちゃんに会釈をすると、井川さんは駅に向かって歩いて行った。

後姿を見送る。

井川さん、最近姿勢いいよね?

その後姿には、色白やせ眼鏡の面影がない。

よいしょと言ってお父さんを背負ったお兄ちゃんを見上げた。

「お兄ちゃん、井川さんと何話したの?」

「そりゃお前、秘密だよ」

「なんでよ!じゃあ賭けって何?」

「それも秘密」

「なにそれーっ!」

なんだか全然わからない。

「もう!ホントに殴ったのかと思って心配したんだから」

「……殴ったけどよけられた」

「えっ?」

「アイツ、けっこう喧嘩慣れしてんじゃない?」

「エエーッ!」

嘘だよ!それは勘違いだよ!

だって色白やせ眼鏡だよ?
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