女子力高めなはずなのに
普段ならそんなこと他の人には絶対に言わないのに、言葉が口をついて出てきた。

「……お父さん、酔うと見境がなくなるから」

言ってもそんな状況、きっとわかんないよね？

私、喋りすぎたな。

井川さんは何かを考えるようにじっと私を見つめた後、静かに口を開いた。

「実家に行ったのか？それとも親父が家に来たのか？」

「え？あ、えっと、家に、来た……」

「じゃあ、今度親父が家に来たら一人で出ないで俺を呼べ」

「……」


なに、それ……。

そんな、お兄ちゃんみたいなこと、言わないでよ。

井川さんは自分の名刺の裏に電話番号とメアドをサラサラと書いて私に押し付けてきた。


名刺を受取ったら、その手でもう一度そっと頬に触れて覗き込んできた。

手の大きさを感じて、思わず息が止まる。

「痛い？」

「え？……いや、もうそうでもないけど……」

「……許せない」

「？」

刺さるような真剣な瞳……。

「お前を傷つけるなんて許せない」

……やめて、よ。

なんでそんな苦しそうな瞳をするの？

そんな瞳で、そんなこと言わないで。
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