キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
「・・・また私の寝顔、見てたの?」
「うん。飽きねえんだよなー」
「あぁそぅ」

と呟く聖はすでに顔が赤い。
恥ずかしがってる証拠だ。

俺たちが一緒に暮らし始めて1年経っても、聖の寝顔を見飽きることはない。
そんな日は一生来ねえ。

「寒い」と聖はつぶやくと、俺にすり寄ってきた。
4月だし、布団の中にいれば寒くねえことは、互いに知っている。
つまりこれは、恥ずかしがり屋な聖の俺に対する甘えだ。

そんなひーちゃんがめちゃくちゃ可愛いと思いながら、俺は喜んで聖を抱きしめる。
俺にこんな・・・幸せ感じる日が来るとはなぁ。

聖は去年の3月いっぱいで仕事を辞め、その翌月初めに俺たちは今住んでるマンションへ引っ越したのを機に、俺たちは入籍した。
海が見えて緑豊か。
そして小学校が近くにあり、静かな住環境のマンションの3階の一部屋が、60㎡にも満たない小さな俺たちの住処だ。

俺は去年の4月から10月までの半年間、慶葉(けいよう)大学で犯罪心理学とプロファイリングを教える傍ら、事件で呼び出されれば出向く生活をしていた。
大学での講義が終わった後も、俺は現場へ行く量を減らし、未来のプロファイラー育成のため、警視庁内でプロファイリングを教える時間をその分増やした。

だから聖と一緒に過ごせる時間は増えたが、扱う事件の量が減ったからといって、俺の仕事は相変わらず危険なことに変わりはない。
だからこそ、俺は聖と一緒に過ごせる時間を大切にしている。
ありがたいことに、その思いは、ひーちゃんも持ってくれている。

「おはよ、ひーちゃん」
「おはよう、和人さん。よく眠れた?」
「ああ。たくさん動いた・・おいっ!背中つねんな!」
「そんなこと言わないのっ!」

ムッとしてるフリしながら、実はすっげー照れてる聖は、やっぱ・・・可愛い。

「今日はどっちだ」
「おもてなし教室・ランチ編。クラムチャウダーを出すの」

引っ越してから、聖は家の近くにあるカフェで、週3日の割合でバイトを始めた。
厨房にこもってあれこれ作ってるものが好評を得た聖は、それから月に一度、「おもてなし教室」を自宅で開くようになった。
主に家づくりと料理のことを書いてるブログも人気があるらしく、それを見て申し込んでくる人も多いと聖が言っていた。

俺たち夫婦には子どもはいないが、子どもたちに関わる生活をしている。
うちの壁の一画には、施設の子どもたちの笑顔の写真がたくさん貼ってあるし、聖は時々なつのさんたちが運営している施設へ顔を出しては、「試作品」の料理をふるまっている。
「子どもたちがおいしいといって食べてくれることが、すごく嬉しい」と言ってた聖は、とても活き活きして見てた。

「パンも手作りしたいなーと思ってね。でもクラムチャウダーにごはんって、意外と合うかも・・ん?何?和人さん」

以前聖に、「和人さんは、私の心をとらえて離さない人だ」と言われたことがあるが、真相はちょっと違う。
俺の心をガッシリつかんで離さないのは、ひーちゃんの方だ。

「好きだよ、ひーちゃん」
「うん・・・私も。和人さんのこと、好き」

ああ、知ってる。
俺の心、一生つかまえてろよ、聖。
おまえの心も一生つかまえてっからな。

キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~ 番外編 完

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