絶対零度の鍵
夢見る少女
望月透(もちづき とおる)


僕のただ一人の兄であり、年が13歳離れている。


出来の良い兄貴は性格も良くて、誰からも好かれている。


小さい頃から両親の熱い期待にも応え続けたし、親孝行で国立を出て医者になった。


ちなみに言うと、祖父が医者で病院経営をしており、その後を継ぐとかなんとかで有望視されている。


僕とは大違いで、僕なんかはいつもただのおまけみたいなもん。


そんなのは小さい頃からわかっていた。

僕はただかわいければいい。

マスコット的な存在であればいい。

だけど、駄目すぎてもいけない。


ま、そんな感じだ。


どうせ運動会の駆けっこで一等を取ったって、リレーの選手になってアンカー走ったって、誰の記憶にも残らない。

だって兄貴もそうだったから。

兄貴もいつも一番だったから。

どうしたって必然的に僕は二番になっちゃうんだよ。


生まれたのは兄貴の方が早いんだから。
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