絶対零度の鍵
それに―

これは僕の勘だが。


右京は僕以外に力を見せない気がする。


証明してみせろって言ったところでしないだろう。


今回だって、僕に力を見せようとしたというよりも。


明らかに食べ物をもらえなかった恨みから引き起こされた結果だったと思う。


いや、絶対に合ってる。


思考は至って幼い。


短気で乱暴者で好奇心旺盛で異人。


うーん。


僕の手には負えない気がする。



「望月。その子は誰だ?」



いつの間にか僕の前に来ていた先生が尋ねる。



「えっと…」



答えに窮していると。



「ハジメマシテ。今望月くんのお宅にホームスティさせていただいています、右京と言います。突然で申し訳ないのですが、今日ヨビコウというものを見学させていただくことは可能でしょうか?」



右京が変に上手い留学生訛りで営業スマイルを発動した。



「ほぉ。そうなのか。まぁ、今日だけならいいでしょう。ぜひ勉強してってください。しかし、こんな美人がホームスティなんて、望月が羨ましいなぁ。」



先生は快諾してしまった。



恐るべし。右京。
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