絶対零度の鍵
温度師の物語







「蓮貴(れんき)!」


少女の声が聞こえて、池の水面(みなも)を見つめていた少年は、はっと辺りを見回した。


「まーた!こんな所に居て!叔母様に怒られるわよ。いつも居場所を聞かれる私の身にもなってよ!」


プンプンと怒りを顕にする栗色の髪の少女を、少年は楽しそうに見つめた。



「そんなに怒ると鬼になるぞ」


そう言って立ち上がった少年の髪は漆黒で、瞳の色もそれと同じだった。


これほど整った美しい者はこの田舎には珍しく、村中の誰もが彼を見て思わずうっとりと溜め息を吐かずにはいられない。



「全然懲りてないのね!叔母様が稽古の時間にまた抜け出したって困っていたわよ」



少女は腰に手を当てて、頬を膨らませた。
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