絶対零度の鍵
謎の痕跡

「とはいったって…」




山の上空を飛行しながら、右京は早くも途方に暮れている。




「あたしは探偵向きじゃないのよぉ。どっから手を付けていいか、わかんない…」




それでも気になる場所があった。



大雨の際に、雷が落ちて真っ二つに割かれた大木。




「もう一度、見てみよっと。」




そう呟くと、右京は山に降り立った。



真っ黒になった木は変わらずそこにあり、びりびりと紙を破いたかのようなぎざぎざの痕跡が、雷の威力を教えている。




「かわいそう」




木の痛みが伝わってきて、右京は顔を歪ませた。
< 40 / 690 >

この作品をシェア

pagetop