絶対零度の鍵
途端に軽い頭痛が僕を襲う。



「その花、何かあるの?」



痛みに顔をしかめながら、僕は訊ねた。



「この花は―」



すっと蓮貴は胸に挿さる花を抜く。



「翠と一心同体になるように、術をかけてあるんだ。翠が元気なら、この花は枯れることなく美しく咲く。病にかかれば元気がなくなる。」



「…それじゃ、蓮貴の部屋に飾ってあるのは―」



僕の言葉に蓮貴はふっと笑った。



「俺は傍にいてやれないから。」



蓮貴の瞳が、揺れる。



じゃ、いつもあの池のほとりにいるのも。



―蓮貴様がお好きな場所でしょう!


―幼い頃からよく通っていますゆえ。




離れていても、見守れるように。





この白い花を通して、彼女の姿を映して。
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