絶対零度の鍵
壊された空間












空気が切り裂かれている。


その狭間から見え隠れしている、ここではない世界。


歪みはあちこちに生じ、混乱を免れることは最早できそうにない。




城は崩れ去り、空は荒れ狂い、竜巻が生じ、雨が降り頻っていた。




何もない空間に、つまらなさそうに座している男が居る。




その足元には、白い虎のような獣が咆哮を上げている。




ずっと下にある切り立った崖に、横たわる黒い翼の女がおり、その隣に縋るようにして泣いている、やはり黒い翼の女があった。




かろうじて、虎と対峙するようにしている白い片翼の女は、翼とは逆の肩に怪我を負っており、鮮血が流れていた。



見るからに重症に見えるのに、彼女は痛みなど少しも感じていないようで―





「クミをどこにやったのよっ!?」





獣の向こうにいる男に向かって、怒鳴り声を上げた。


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