厄介なkissを、きみと ー fairy tail ー
席に座ったままタケルを見送ったあと、鞄から教科書を取り出し、机の中にしまっていた。
すると、視界に小さなピンク色が入り込む。
右のナナメ下。
床を、コロコロと転がっていく。
「………」
持ち主であろうそいつ、ーーーあゆみは、おしゃべりに夢中で気づいていないようだ。
……仕方ないな。
オレは席を立ち、そのピンク色の物体を拾い上げると、あゆみの肩をツンツンとつついた。
「ん?なに?」
あゆみはオレを見上げ、首を傾げる。
「これ、おまえの?」
あゆみの机の上に拾ったリップクリームを置く。
「あ。うん、そう。私の。ありがとー」
そう言うと、一緒にいた友達に、また失くすところだった、と肩をすくめて見せた。