夏恵

『明日は土曜日だし、このままコッチに泊まってもいいなぁ』と自分を勝手に納得させて酒を頼む事にした。

僕はマスターにキリマンジャロの並びにあったソルティドッグを頼んだ。

案の定、業務用のボトルから注がれたカクテルが僕の前に置かれた。

僕はグラスの縁の塩を一舐めしてソルティドッグを喉奥に注ぎ込む。

甘みの強い安っぽい味を塩味でぼやけさせて、僕は喉を二鳴り程鳴らし外を見る。


相変わらず外は雨だ、駅前なのに通る人もまばらだ。


夕方とは違って雨が降り出してから随分時間が経っていたので、僕みたいに逃げる様に、この喫茶店へ駆け込んで来る人はおらず。

皆カサを差して家路を急ぐ。

僕が二口目を流し込もうとした時に、入口の扉の上の鐘がカラカララと慌しく鳴り響いて扉が開いた。

外の雨の音が店の中に吹き込んできた。
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