夏恵
夏恵は夏の朝の日差しが好きだった。

正しくは夏恵は夏の全てが好きだった。

茹だる様な暑い日も、蒸し返る夜も、コメカミに滲んで頬を伝う汗も、西瓜も、桃も、全て夏恵の愛すべき季節だった。

僕が夏に生まれた事も彼女は愛してくれた。

夏に生まれた僕を彼女は愛してくれた。

夏の暑い日差しの下、彼女は僕の誕生日を一緒に祝ってくれた。

あまりの暑さに冬を恋しがった僕をいさめた事もあった。

夏恵の誕生日は寒さも本格的になる11月の終わり頃だったが、夏恵は夏を愛した。

僕はそんな夏恵を愛した。彼女が夏を愛す以上に僕は夏恵を愛した。
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