夏恵

僕は酷く疲れていた。


夏恵と自分の境界線が判らなくなる程に求め合った為か、それとも夢から覚めぬまま現実に飛び出し今日を生き抜いた為かわからない。ただ僕は酷く疲れていた。

そんな僕には、明子との『楽しい会話』を取り繕う気力が湧いて来なかった。

けして、いつも明子と楽しい会話を心掛けているかと言うとそうでも無い。

普段から明子は僕に気を使わせる様な素振りも見せないし、僕も明子の前で変に気負う事なく素のままで接している。

彼女は僕の性格をある程度把握しているし、僕に過剰な期待はしない。

どちらかと言うと冷めた所のある僕に期待するのは到底無駄な事と、ある程度踏んでいるのだろう。

僕もそんな彼女と過ごす時間は有意義で楽だった。

ただ今日の僕は酷く疲れている。

目を閉じれば、そのまま夢の中に戻れそうなくらいに疲れていた。
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