夏恵

明子は飲み干した僕のコーヒーカップを見て、すかさずコーヒーメーカーのコーヒーを注ぎ入れる。


『・・・トモユキ』


『・・・ん?』


『あんまり無理しないでね・・・』


『・・・ああ』


明子はコーヒーを注ぎながら言う。

僕はコーヒーの注がれるコーヒーカップを見つめながら、御座なりに答える。

明子は何に対して、そう言ったのかを僕が窺い知る事は叶わないが、彼女は僕に不安を感じている。

実に可笑しな話だ。

僕は彼女の変化に不安を感じたが、彼女は僕の変化に不安を感じていた。

そしてその不安は昨夜の彼女を生んだ。

僕は明子の注いだコーヒーを飲み干し仕度を始める。

明子はいつもの様に食器を手際良く片付けて自分の仕度を始める。
< 77 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop