薬指の秘密
「だから、迎えに行くって」

連絡して

「え、いいよ。出張がえりで疲れてるでしょ。タクシーで帰ってくるから」

「いいから」

つべこべ言わずに電話する

間髪入れない海斗の言葉と漆黒の瞳に

「…う、ん。わかった。電話、します」

こくこくと頷く

「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

ドアの向こうに消える背を見送って、静まり返った玄関先で小さく首をかしげる

「変な、海斗」

今まで迎えに行くなんて言ったことはないのに

それが莉彩からのお呼び出しでも仕事が終わっていれば迎えに来てくれるけど

タクシーを使おうとも何も言わない

しかもこんな風に少々強引に

釈然としないまま、首をかしげつつ

温かなリビングに戻ってミルクティに口をつける

「…やっぱり変」

見下ろしたカップの中身は、ほんのりと薄茶色
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