薬指の秘密
「て、言うんだけどさー。だったら迎えに行くよとか言ってくれないのかなー」

この間は迎えに来てくれたのに

程よくアルコールが廻り始めたころ、隣に居た章子に愚痴る

「過保護すぎないところがいいんじゃないの。いつでもどこでも迎えに来てくれるなんてただの都合のいい男」

それ彼氏じゃないわ

「でーもさー」

「迎えに来てほしいならそう言えばいいのに」

頼めば来てくれるんでしょ?

「まあ、たぶん」

「じゃあいいじゃない」

「うん」

むすっとしたまま頬杖をつくと隣で章子が噴き出す

「しるふさ、本当に彼氏さんが好きなんだね」

こんな乙女なしるふ初めて見たわ

「好きじゃないもん」

そらした視線の先に他の人と騒ぐ山岸がいて、不意に視線が合う

「そうやって彼氏さんを散々振り回してるわけだ」

小悪魔ね

視線が合うとあの人懐こい笑みを向けてくる山岸から章子に視線を移す
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