独り歩き。
愛。




日曜日、一人で出かけていったお姉ちゃんが泣きながら帰ってきた。


「どうしたの、菜々?」


心配して駆け寄るお母さんに、お姉ちゃんは涙混じりの声で言った。


「…涼にフラれちゃった。」


とにかく信じられなかった。


あのお姉ちゃんが。


誰からも愛されて、優しく、大事にされてきたお姉ちゃんが。


フラれるなんて…


きっと、お姉ちゃんもフラれるなんて思ってなかったんだろう。


お姉ちゃんにとっとはきっと初めてだろう。


愛されたいと求めたのも。


求めているのに手にはいらないのも。


でもね、お姉ちゃん。


それが私が今まで抱え続けていた苦しみだよ。


それが私が今まで抱え続けていた悲しみだよ。


それが私が今まで抱え続けていた痛みだよ。


本当なら、慰めてあげなきゃいけないのかもしれないけど、私はそれができなかった。


だって、やっぱり私とお姉ちゃんは違うから。


だってお姉ちゃんには支えてくれる人がいる。


どんなに苦しくても、悲しくても。


傍にいて支えてくれる人がいる。


それがどれだけ幸せか。


お姉ちゃんにはわからないんだろう。


お母さんに背中をさすられながら大泣きしているお姉ちゃんが、ちょっと羨ましかった。





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