土曜のイケボな委員長
「ごめんね、委員長ちゃん…」
あゆも
反省しているようだ。
小ささが増している。
「……」
「…やっぱり怒ってる?」
何も喋らない委員長を
怒っているととらえたあゆが不安そうに俺を見た。
「大丈夫だよ、あゆ
今日はもういいから教室帰りなっ」
俺はそう言って
彼女の頭を優しく叩いた。
あゆもコクッとうなずくと
委員長にお辞儀をしてから廊下から消えた。
委員長は遠くなるあゆを見て
罪悪感に覆われたようなそんな顔をした。
そういえば、
委員長が話している姿をあの日以前は
ほとんど見たことがない。
いや
見てないだろう。
「…ちょっと言われるイヤかもしれないけど…
もしかして声、コンプレックスだったりする?」
委員長はそんなこと言われたことが
なかったのか
照れたように顔を振った。
みつあみしている髪が揺れ
俺の鼻にシャンプーの香りが届いた。
「いいにおいっ!」
といきなり抱きつきそうになった。
そーいえば男は
香りに弱いと聞いたことがある。
「えっじゃあなんで
みんなと話したりしないの?」
「あっやっ…
その、自分の声は別に嫌いじゃないし
特にコンプレックスとも思ってないんですが
やっぱり女なのにこんな声、
おかしくないですか?」
心配なのかどうなのかわからないが
言いながら近づいて来る。
ようするに
あのイケボが耳近くに迫っているということだ。
やばい、
俺、男なのに…
いや相手は女だからいいのか?
いやいやでも…
俺は完全に
思考回路が停止していた。


