星に願いを~たくさんの幸せをありがとう~
脱走しちゃいました。



~蒼 side ~


松本・杉本・高木の3人を送り


あとは美姫と五十嵐だけ。


五十嵐の家に向かおうとすると


拓真『病院に行ってくれ。』


病院?


拓真『美姫をみてもらう。』


後ろで寝てる美姫をみると

熱があるせいか息苦しそう。

たしかに病院に連れてったほうがよさそうだな。

でも…


蒼『急に行ってみてもらえるのか?』


病院って予約しないとだし

してても長く待たされるイメージなんだよな。


拓真『美姫は特別。』


なんかすごいな。

…それほど美姫の病気が大変ってことか…


拓真『親父にも言ってあるし。』


いつの間にそんなこと…

さすがだな。


病院に行くまでの間

しばらく沈黙が続いた。

…なんか気まずい…


そうだ。

美姫のことで気になることあったから

聞いてみるか。


蒼『美姫って昔から体弱いの?』


拓真『…あぁ。これでも良くなった方だけどな。』


良くなった方って…

今より悪かったのかよ。


拓真『昔から無理するから…
しょっちゅう倒れてそれで
入退院の繰り返し。』


…美姫らしいな。

よく入院してたのは聞いてたけど…

そこまでだとは思わなかった。

こんなときなんて言ったらいいんだろう…


蒼『…そっか。大変だったんだな…』


他に何を言えばいいのかわからなかった。


そんな話をしてる内に病院に到着。


五十嵐先生が来てくれるそうだから

車で待ってると


美姫『……ん…』


起きたかな?

後ろをみるとまだ眠たそうに

目をこすってぼーっとしてる。


そんな美姫をみてると

五十嵐先生が来た。


事情を説明しようとすると


五十嵐先生『拓真から聞いてるので大丈夫ですよ。わざわざありがとうございました。
…さて美姫ちゃん行こうか?』


相変わらず優しい話し方。

小さい子を相手にしてるみたい。

美姫をみると…


うわ…すっげぇ機嫌悪っ。


美姫『…おじさんに言わないでって言ったのに…』


五十嵐に文句を言ってる。


拓真『…ごめん。
でもこのままだと辛いだろ?』


美姫『…辛くないもん…!』


なんか…

いつもの美姫と違う?

わがままと言うか…

小さい子みたい。

五十嵐も


拓真『みーき。行くよ?』


小さい子をあやすみたいな話し方。


少し不思議に思ってると


五十嵐先生『美姫ちゃんは熱が高くなったり
体調が悪くなるとこうなるんですよ。』


微笑みながら教えてくれた。


五十嵐先生『いつも我慢してるから
体調が悪くなると我慢しないで
わがままになったりあまえたりするんですよ。』

へぇ…

はじめて知った。

五十嵐はもう慣れてるから

あんな風に接してるのか。

五十嵐だけで大丈夫か…?


蒼『俺たちも行ったほうがよくないですか?』


美姫なかなか頑固だから…


五十嵐先生『それなら大丈夫ですよ。
拓真がいますから。』


たしかに五十嵐は美姫のことをよくわかってるみたいだけど…


向こうをみると


拓真『ほーらおいで?』


美姫『……やっ…!』


この繰り返し。


…ほらな。


俺も美姫のとこに行こうとすると

『この前…』


五十嵐先生が話し出したので足が止まった。


『拓真が医者になるって言ってきたんですよ。なんでだと思いますか?』

なんでって…

そんなこと聞かれても…

返事に困ってると


『美姫ちゃんの主治医になって
病気を治したいって言ってきたんですよ。』


え…!?

でも


蒼『美姫の病気は…その…
治らないんじゃないんですか?』


美姫本人も言ってたし。


五十嵐先生『…はい。そうです。
それを拓真に言ったら
「今は無理でも将来はわからないだろ。」
って言われてしまいまして…
自分の息子ながらすごいと思いましたよ。』


微笑みながら教えてくれた。


「今は無理でも将来はわからない」か…


本当…すげぇな。


そんな話をしてると五十嵐が美姫を抱えてきた。


さっきまであんなに嫌がってたのに…


蒼『よく素直に来たな。』


拓真『素直じゃねーよ。
どんだけ苦労したか…』


ふぅ…

とため息をはきながらこっちへ来た。


蒼『…そのわりには大人しいじゃん。』


さっきまで嫌がってたのが嘘のように

大人しく抱かさってる。


拓真『嫌がってたけど
やっぱ体がキツかったみたいで…』


やっぱそうか…

五十嵐は美姫を抱きかかえて病院に入っていった。

こんな時なのに五十嵐に嫉妬してる自分が
恥ずかしい。

そんなこと言ってる場合じゃないのに…

五十嵐は昔から美姫といて

俺よりも美姫のことわかってて…

なんか悔しい。


五十嵐の後ろ姿をみながらそんなことを考えていた。


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