多重人格者【完結】
「部屋で、待ってる」
それだけ言うと、殺樹は義父のいる部屋を後にした。
それから、カンナに話しかける。
≪カンナ≫
≪……何だよ≫
≪殺るんだろ?≫
≪絶好のチャンスっていうわけかよ?≫
≪そうだ≫
もちろん、カンナにはさっきの草野とのやり取りは聞かせていない。
絶対にこれは聞かせてはいけない事だったから。
≪何でお前に決められなきゃいけないんだよ≫
≪いや、別に俺が殺ってもいいけど≫
殺樹は自分の部屋に戻る前、キッチンに向かうと包丁を取り出す。
それをタオルに包んで、部屋に入った。
中でタオルを取ると、その包丁を月の灯りに照らし出して、ゆらりと微笑む。
一度、カンナの舌打ちが聞こえた。