多重人格者【完結】
「私…の、中…?」
ぽつりと、誰もいない部屋で呟く。
意味が…
≪わからない?≫
私が思った続きを言い当てられて、ぎくっとする。
その反応がおかしかったのか、その声は暫く笑っていた。
≪だって、アタシはあんただもの≫
「…え?」
≪アタシはあんたの義父にされたことの身代わりだったっつうわけ≫
………親父…?
身代わり?
わからないことだらけで、頭はパニック寸前。
≪覚えてないんだね?
…はっ、全く都合いい≫
≪カンナ!≫
その時、また別の声が響く。
それは男の子の声にも聞こえる。
…これも、私なの?
どういうこと?
≪…昴、黙っててよ。
こいつが何してたのか、教えてあげないとでしょう?
だって、忘れてるなんて…一番腹立つのはあんたじゃないの?≫
≪…………わかった≫
昴は息を飲み込んだ後、そう言葉を発して“消えた”。
≪さて、じゃあ話そうか。
離婚したのは、あんたが五歳の時≫