多重人格者【完結】
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その事件から、数年経った。
もう、誰もその事件の事を思い出さない。
一人の、少女。
いや、もう立派な女性へと成長した、かつてあやめと呼ばれた人がそこにいた。
そして、その彼女を迎えに来たのは。
被害者であった、草野だった。
「な、んで」
「迎えに来た。俺はずっとあやめを待ってたから」
それを聞くと、彼女は顔を歪める。
そして、草野の胸に飛び込んだ。
草野は優しく彼女を包み込む。
「……っ、嬉しい、うれ…」
「泣くなよ、もう全て終わったんだ」
「うん、うん」
「……あやめ、愛してるよ。
あやめは俺の事、好きか?」
「うん、大好きだった。ずっと。最初から」
「はは、嬉しい。ありがとう。嬉しいよ」
「……ふふ」
「それじゃあ、行こうか」
「うん、行こう」