私、立候補します!

(エドワードはエレナさんを城に残したいか……)

 動作で誰を示したか察した彼に、さすが僕と従兄弟なだけはある、と内心でほめながらチェインは手を離して再び考える。
 今まで偶然なのか必然なのか、北方への訪問にあたる際にラディアントの妃候補の女性はいなかった。
 前例がないだけにラディアントも悩んでいるのだろうとチェインは思ったが、同時にこれは二人の仲を深めるいい機会なのではないかと思案する。
 国王の依代式が発動したことによってエレナとラディアントの距離は近づいたが、チェインはいまいち親密さが足りないと感じていた。
 呪いと化した魔術により日中のラディアントが女性であることを考慮しても、手をこまねいていてはただ時間が過ぎるだけ。
 ましてやエレナはサセット国の人間ではなく、ライズ国に戻ってしまえば会える機会は格段に減ってしまう。

(今まで有事はなかったし、ここは彼女の同行をすすめてみようかな)

 エドワードに抗議されるだろうことを想定に入れ、チェインはソファーから立ち上がるのだった。


***


 翌日、城の前に集まる一行の中、エドワードはチェインに向き合いひたすら安全を優先するように言い募っていた。

「分かっているだろうな。何があってもラディアント様とエレナさんを危険からお守りしろ」

「分かってるよ。君は心配性だなぁ」

 出発を前に十分は続いている小言に、チェインは聞き飽きたとばかりに顔をしかめて横に向ける。
 エドワードはふざけているともとれるその様子にますます熱を上げたが、ラディアントに名を呼ばれてなだめられては諦めざるをえなかった。

「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

「私のことは気にしなくていいから」

 エドワードはチェインをひと睨みした後にチェインの隣に立つラディアントに頭を下げる。
 ラディアントは眉を下げて笑みを浮かべ、未だにつんと横を向いているチェインを見ながら否定した。
 チェインとエドワードの意見が合わないのは珍しくことではなく、ラディアントにとっては慣れた物。
 お互いに思うことはあるのだから出来ればどちらの主張も尊重したいとラディアントは思っている。

< 59 / 121 >

この作品をシェア

pagetop