私、立候補します!
15 忠告

 エレナが道案内を立候補したアレクセイに連れられていくのを見送ったラディアント達は、国境の状況を話し合うべく直ぐにニールの執務室へと向かった。
 ニールの執務室は使用感がなさそうなほどに整頓されており、チェインが目を丸くして珍しそうに部屋の中を見回す。
 その様子を見たラディアントが眉を寄せて注意をしようと視線を向けたが、ニールが手を上げてそれを止めた。

「見られて困るものはありませんから構いませんよ。それよりも国境の警備について話しましょう」

「部下がすみません」

「いえいえ」

 眉を下げるラディアントに口だけで笑みを作ったニールは執務机の上に丸めて置いていた地図――自身の領地付近を拡大した物――を広げてみせる。
 それから自分の城がある部分を赤いインクをつけたペンで丸く囲み、その後に国境となる位置の所々に丸い印を書きこんでいく。
 ニールの手の動きを追いながら確認していったラディアントは呟きをもらし、長い指の先で印を数えた。

「前回よりも結界の弱った場所がやけに多いですね」

「ラディアント様もそう思われますか」

 前回ラディアントが訪れたのは寒さ厳しい三ヶ月ほど前のこと。
 その間に前回の軽く倍をこえる場所の結界が弱っていて、これほどに数が多いのはラディアントが担当して初めてのことだった。

「この数だとしっかりと結界術をかけ直すために滞在期間を延ばした方がいいですね」

「ぜひそうしていただけると助かります。ワタシ共ではラディアント様ほど強度を持つ結界は張れませんので」

「そのようなことはありませんよ。ただ、私の務めですから精一杯のことをさせてもらいます」

「うわぁ、見事に増えていますね」

 ラディアントの後ろから顔を覗かせたチェインが地図に視線を向けて顔をしかめた。
 そして机のまわりに立っていた二人の間に入り、最初にニールがつけた城の印から遠い二か所を指で叩く。

「念のために両端だけでも二重結界にします?」

 チェインの言葉にラディアントは顎に手をあて、次いでニールに心配げな視線を送る。
 チェインも主に続いてニールを見つめ、二人の視線を受けた彼は眉を下げて表情を崩した。

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