my sweet devil



「綺麗だなーっ」


悠は大きく伸びをして、笑った。


この屋上からは、桜の木を真上から見下ろせる。


ピンクの花びらが舞う。



「あぁ、綺麗だな」



またあの日を思い出した。




『どうしてないてるの?』


好きだよ


『またあえるよ!』


大好きだよ



「なぁ」


「ん?」


「篤志ってさ、なんで桜見るたび泣きそうになって黙るわけ?」



ハッとして、悠の顔を見た。


「芽依ちゃん関係?」


またニヤリと笑う。


……っとに、なんでこうも簡単にわかるのかな、コイツには!



「……そうだよ」


少しふてくされて言うと、悠はさらに顔をニヤニヤさせる。


「思い出の場所?」


「うん」


「なんの?」


「………出会いの。」


「え?出会いって、芽依ちゃんがお前ん家に来た日じゃないの?」


「うん、まあ、そうだけど。ほんとはもっと前に会ってたんだ。桜の木の下で。」



正式な出会いは、芽依が俺ん家に来た日。


つまり、芽依が俺の『お姉ちゃん』になった日。



だけど、もっと前に出会ってたんだ。


芽依はたぶん、覚えていないだろうけど。



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