秘密
夏休みも近づいたころ、親が塾の夏期講習のパンフレットを持ってやってきた。
『夏の特別特訓!!志望校をつかみとろう!栄立塾』パンフレットには、びっしりと講座の時間割が書いてある。
前々から何度も言われていただけに、もう当たり前のように同意して、あたしは夏休みの始まりと同時に、地元の駅の近くの塾に通うこととなった。
あの塾に通うことは、運命だったのかな。もしあの時、親の話を断っていたら、こんなことにはならずにすんだのかな。
あっという間に終業式も終わり。教室で成績表を見せ合っては、ぎゃーぎゃ騒いでるクラスメイトをよそに、あたしはエミとこれからの勉強三昧の夏休みについて話し合っていた。
「夏はもう来たってのに、何だろうね。このうちらのひからびようは…」さっき担任から受け取った成績表であおぎながら、エミはけだるそうに言った。
「いいじゃんエミは。勉強だって言っても、彼氏が教えてくれるんでしょ♪」
エミの口が少しニヤッとした。エミの彼氏は、うちらの一つ上の高校生。県で一番頭のいい高校に通っている。エミももちろんその高校を狙っているらしい。エミはクラスでも中の上くらいだけど、彼氏と同じ高校となると、なかなか難易度は高い。でもあたしは応援する!!愛する彼氏といい高校に行くなんて、素敵なことぢゃない☆
そしてあたしもクラスでは中の上くらいの頭なんだけれど、県で一番の高校に行くなんて野望は特にない。
中くらいより上のそこそこの高校に入りたい。もとより、親はそう思ってないみたいだけどね。
始まってしまった夏休みにあたしは何の希望もなかった。こんなに乾いたあたしを誰かが救ってくれることだけを願っていた。そんな救世主は突如現れることになるのだ。