でも、好きなんです。
「やっぱり、まずは髪型でしょ。」

そう指摘してきたのは、同期の澤田茉莉だった。茉莉は、千春ほどの美人ではないけれど、着ている服は、常に流行の最先端、メイクも睫毛エクステにファンデはリキッド・パウダーの二重遣い、化粧道具はすべて外資系ブランドという、ばっちりイマドキの女の子だ。

「髪型・・・?」

「そ、髪型で女の印象は180度変わる!」

茉莉が自信を持って断言する。

「はっきり言って、今のあんたの髪型は全然駄目!0点!いかにも伸ばしっぱなし、おまけに毛先痛み過ぎ!」

「ど、どきっ。」

 鋭い指摘に、心の声が実際に音声で出てしまう。

「いい?いまどき、パーマ&カラーがレディーの常識!わかる?」

「パ、パーマ&カラー・・・。で、でも、そんなことしたら、いくらかかるかわかんないし・・・。」

「そこからしてすでにアウト!いい?女はお金をかけて美しくなるの!あんた、いかにも貯めこんでそうじゃないの。二十代の今使わなくて、いったいいつお金使うのよ?」

「そうかもしれないけど・・・。」

「まあ、相手が妻子持ちっていうのが、どーも投資に見合う回収が出来ない気がするけど・・・。まあいいわ。今週の土曜、美容室行くよ、美容室。わかった?」

 そう言うと、茉莉は、携帯電話で美容室に予約を入れてしまった。パールピンクのネイルがまぶしい。今どきの女の子って、自信があって、元気があっていいなあ、と思いながらオフィスを歩く。

はあ。美容室かあ。緊張するなあ。茉莉は、神戸の高い美容室を予約したって言っていた。

最近、地元の安い美容室でしか髪を切っていない私は、すでにビビっている。

美容室といえば、お洒落な人々のるつぼのような場所ではないか。

お金出して、お洒落美容師に憐れみの眼差しをもらって、みじめに帰ってくるのかなあ。

 遠い高校生の頃の記憶がよみがえる。

 ・・・私にも、一生懸命綺麗になりたいと思い、小遣いを握りしめて都会の美容室に通った日々があったのだ。

 ああ、たしか、あの時の片想いも実らなかったなあ、ははは。・・・ふう。また、ため息。
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