でも、好きなんです。
 家に着いた途端、猛烈な眠気を感じて、ベッドになだれこんでしまった。

 そのまま、少し眠ってしまったようだ。

 はっと目が覚めて、時計を見ると午前二時だった。


(すっかり眠っちゃった。)


 ふと、携帯電話を見ると、窪田さんからのメールを受信していた。



『出張の準備、お疲れさま。

 無事、終わったかな?

 明日は、課長と河本さんがいないというのは、心配というか、寂しいというか・・・。
 
 ・・・って、こんなこと書いてちゃ駄目だね。

 ごめん。

 留守は僕に任せて、頑張ってきてね。

 じゃ、明日は気をつけて!』



 ・・・窪田さん、私と課長が一緒に出張に行くのを、やっぱり気にしてるみたい。


(お風呂、入らなきゃ・・・。)


 まだ覚めきらない目をこすって、お風呂場に向かった。

 シャワーを浴びながら、帰り道で、課長から聞いた話を思い返していた。


(課長・・・、すごく辛そうだった。)


 課長のことは諦めよう、と思っていた矢先に、こんな話を聞くなんて・・・。


(チャンス・・・って、思うべきなのかな?)


 課長の悲しそうな顔を思い返すと、とてもそんなふうには思えなかった。

 仮に課長が奥さんと別れたとしたって、私のことを好きになってもらえなかったら、なんの意味もない。

 課長には、幸せでいてほしい・・・。

 今の課長が、奥さんと別れることで、幸せになれるとは、到底思えなかった。


(課長は、奥さんのこと、本当に好きみたいだもん・・・。

 そりゃあそうだよね、結婚まで、した人だもんね・・・。

 十年一緒にいた人だよ・・・?かなうわけないよ。)


 自然とため息が漏れた。

 課長に、今すぐ奥さんのことを忘れて、私のことを好きになってほしいなんて、思っていない。

 そんなこと、できるわけない、ってわかってる。

 課長は、一生愛すると心に誓って結婚した人を、そんなに簡単に忘れられるような人じゃないと思う。

 ・・・課長のこと、何も知らないけど、そんな気がする。

 ただ、課長のために何かしてあげたい、そう思った。


 (あんなに辛そうな課長、見ていられない・・・。)

 (だけど、私に一体何が出来るっていうんだろう。)


 いくら考えても、分からなかった。

 
 (・・・いけない!明日は早いんだった。)


 湯船の中で、課長のことを考えていたら、随分時間が経ってしまっていた。


 (・・・とにかく、まずは、明日の仕事を頑張らなくちゃ。

 この前みたいな失敗は、もう二度としないって決めたんだから。)


 課長のことを無理やり頭の隅に追いやって、眠りについた。
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