さくら駆ける夏
「さくらちゃんのことが好きです。俺と付き合ってください」
 その時、大きな花火が一つ、ドーンと打ちあがった。

「ええっ?!」
 周囲の「おお~!」と言う歓声と当時に、私は思わず驚きの声をあげる。
 私にとっては、ものすごい衝撃発言だ。
「本気……だよね? 冗談とかじゃなく?」
 ああ、私は何言ってんだろ。
 混乱して、訳わかんなくなってる。
「もちろん!」
 涼君は、まっすぐ私の目を見つめてくれている。
 すごく恥ずかしい……。
 恥ずかしいんだけど……でも、言葉で言いあわらせないくらい……何というか、その……幸せ。
 花火が、連続で打ちあがっている。
 乱れ打ちって感じ。
 どれも大きく、音がお腹に響いてきた。
 胸がキュッとするのは、その花火の音や浴衣の帯のせいだけじゃない……きっと。

「私も前からずっと、涼君のことが好きでした」
 すんなり、思いが口をついて出た。
 そして、思い切って涼君に抱きつく私。
 もう、気持ちが抑えきれなくて。
 花火は休むことなく上がり、周囲が明るくなるほどだった。
「信じられないくらい、うれしいよ」
 私の身体を包み込むように抱きしめながら言ってくれた涼君。
 それから………。
 私のほっぺにチュッとキスをしてくれた。
 全く予想していなかったので、ちょっとおろおろしてしまう。
 キスされるのは、生まれて初めてだったし。
 それを言い出すと、恋すること自体、初めてだったんだけど。
「あ、えっと、ありがとう……」
「お礼を言うのはこっちのほうだよ。さくら、これからもよろしくね」
 初めて、呼び捨てにされちゃった。
 花火の音と共に、涼君の言葉が身体中にドーンと響いたような気がした。
 私からも涼君のほっぺにキスを返すと、ぎゅっとまた抱きつく。
 大好き……!



 そのとき、バキバキッと木が折れるような音がしたかと思うと、「うわっ」という小さな声が聞こえた。
 びっくりして、そちらのほうへ目を向ける私たち。
 誰かが、転んだような……。
 大丈夫かな。
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