浮気彼氏【完】



私がまだ小さかった頃、お父さんとよく海に行った。

お父さんとの散歩は、いつも海だった。

そこで、秘密の洞窟を教えてもらった。

岩場を少し進んだ所にある小さな洞窟。

そこはお母さんにも内緒の場所で、大きくなってから、私が外へ出なくてはいけない時は、いつもそのばしょにいた。

海を見ていると、心が落ち着く。

ずっとずっと、海を見ていた。



辺りは、もう暗くなっていた。



11月の終わり。

陽が落ちると、さらに寒さが厳しくなる。

私が身につけているのは学校の制服だけ。

だからかな?

ずいぶん前から震えが止まらない。

さっきから頭痛もしてる。

もしかしたら、風邪でもひいたかな?

・・・なんて、もう私には関係無いのにね。


私はクスリと笑って、月明かりのさす暗い海を見つめていた。




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